この日も私は一人でバーに来ていた。
金曜日の午後11時半。
名前も知らない彼も、同じように若い女を連れてきている。
彼と同じぐらい若い女だった。
だけど今日は何だかいつもと違う雰囲気。
「誰よ!アヤコって!!」
女の方がヒステリックに喚いている。
「だぁかぁら。同期だって言ってンだろ?ど・お・き」
彼はうんざりしたように答える。
さっきからその繰り返し。
「嘘!だってあたし見たもん!あなたがそのアヤコって女と歩いているところ」
「ありゃ男だ」
「なにバカなこと言ってるのよ!女優みたいに美人だったじゃない!」
「中身がってこと。あいつを女として見たことなんて一度もねぇよ」
「そんなこと通用すると思ってるの!?」
女がヒステリックに叫んで、席を立ち上がった。
私もうんざりしてちょっとため息を吐く。
ここをどこだと思ってるの?
もっと場を弁えたら?
痴話喧嘩なら外でやって?
そのやり取りに周りに居る客も、バーテンでさえ、ちょっと居心地悪そうに表情を歪めていた。



