201X年 冬 今日、私は懐かしいひととすれ違った。 一年前に別れた年下のオトコ。 見慣れた彼の愛車のBMWのクラクションを鳴らされ、振り返った私に 彼は相変わらずの余裕の笑顔で軽く手を上げ、 窓越しに私に小さくウィンクを寄越してきた。 ちょっと笑い返して、同じようにウィンクを返す。 車が立ち去るまで 私はその行方から目を逸らした。 見上げると、空から綿菓子のような白い雪がふわりと舞っていた。 その白い雪は 芳しく妖しいまでの美しさを湛えた あの月下美人の花弁に良く似ていた。