「上野先生、ため息吐くと幸せ逃げるよ~。」 お前のせいだよ禿げオヤジ、と心で毒吐きながら愛想笑いで返した。 逃げるように席を立ち職員室の出入り口へ向かった上野は、ぼんやりと瀬野のことを考えていた。 この1ヶ月でわかったことは、あのときの違和感が思ったよりも深刻であるということ。 あのときはただ瀬野にしか着目していなかった。 しかし本当は瀬野自身だけではなかった。 瀬野が立ち上がったときの生徒たち、そして松本に上野は違和感を覚えていたのだ。 「あのとき……」