「まってね、たっくん。かぜひいちゃうから…」
と『お姉ちゃん』らしき子が弟を泣き止ませようと頑張っていた。
でも所詮木の下だから、雨を全部避けきれるわけはなくて。
お姉ちゃんは弟の頭の上に小さい手を置いて必死に屋根を作ろうとしていた。
そのまま帰ろうと思ったんだけど…。
なぜだか放って置けなくて。
「…どうしたの?」
と、しゃがんで二人に話しかけていた。
よく見ればどっちもまだ幼稚園くらいの子たちで、小さかった。
「あ、べつに、なんでもないです!」
と少し焦って言う女の子。
きっと知らない人と話しちゃだめとか言われてるんだろうね。
でも男の子は…
「ぼくおうちかえりたいーっ!」
と泣いている。
それを聞いてますますお姉ちゃんはあたふたしてる。
「あはは…はいはい。『お姉ちゃん』、私は怪しい人じゃないからね?」
そう言って、私は差していた傘を女の子に渡した。

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