高橋は気付いてしまった

(真琴の心に今居るのは俺ではない

 薫だ・・・)


ほんとは責めたかった

(今までの俺らは何やったんや!?

たった一度の無理やりのキスで 

簡単に心が変わるんか・・・?)


真琴に聞いた所で答えは決まっていた

『薫の事なんか何とも思ってない』と・・・



(真琴のした事を責めて

繋ぎ止める事は出来るだろう


でもそんな事をして何になる?


真琴の本心が知りたい・・・)




高橋は真琴を呼びだしてこう告げた


「俺は真琴が好きや! 

でも今真琴の気持ちが分からんねん・・・

ちょっと距離置いて・・・

ゆっくり考えて答え出してよ」




自分の心をここまで見透かされていた事に

戸惑う真琴は 

「ごめん・・・・」


それしか言えなかった




その言葉に高橋は絶句した

(やっぱり嫌な予感は当たってたんや・・・)



「別れよう・・・」

真琴の気持ちを楽にするための

高橋の精一杯の愛情だった


自分の方から別れを告げてやる事が・・・




「あいつ・・・結構ええ男やで!!

ちゃんと捕まえとかんと

すぐ誰かにとられんぞ!」



相手が薫なら仕方ない・・・

他の誰かだと絶対自分から譲ったりはしない


でも今の薫は充分魅力的で同性から見ても        
惹かれるものがある・・・

諦めるしかない



言った言葉に二言はなかったが

(もう二度と真琴は

自分の元には戻らないだろう)


そう思うとどうしようもなく悲しかった




騒がしい蝉の声のような

真夏の喧騒は終わりを告げ



同時に切ない匂いのする秋風が


高橋の心を支配した・・・