一通り話し終えた拓はこう言った


「その陸がな・・・

ここにいる薫くんに何となく似てんねん

元気で生きてたら

こんなふうに成長してたと思う」


(そうか・・・そんな事があったんや)


薫が陸に似てるという事は

兄弟である拓と薫も似ているという事


(やっぱり私は薫と同じ雰囲気をもった

拓に惹かれていったんや・・・)


日頃は見せない拓の弱い部分を見て

私は胸が締め付けられる思いでいた


薫の前にいることも忘れて

目の前の拓を抱きしめたい感情に囚われる


あの夏の予選の決勝で

マウンドに崩れ落ち

涙した拓を見た時もそうだった


日頃の姿からは想像できない“弱さ”

それに触れた瞬間に湧き上がる衝動


“守ってあげたい”


拓が真琴の事を思う気持ちと

真琴が拓を思う気持ちが繋がった


この気持ちが

その後大きな愛に変わるのに


それほど時間はかからなかった・・・