若恋【完】




奏さんが大事そうに抱えてくれるものだから、その腕の中に甘えたくなる。

木の陰で押し倒されて、こんなにも非力なんだって嘆いたことも忘れられた。



「もっと早く探し出せてたら、こんな目に遭わせなかったのにな」

「ううん、探し出してくれてありがとう」

「礼を言われることなんかしてねぇよ、俺は」

「ううん、ありがとう。嬉しかった」



温かい腕の中は安心できる。



「帰ったらちゃんと手当てするね」

「お手柔らかに、な」



奏さんがやっと笑ってくれた。



「ごめんね、奏さん…」


「おまえが無事ならそれでいい」



仁さんと榊さんを引き連れて、そう言ってくれた。


「ありがとう、みんな」

本当にありがとう―――

そっと心の中で呟いた。