若恋【完】





「ありがとう奏さん」


奏さんの手に頬擦りをする。


ギュッ

奏さんが正面から包み込んでくれるように抱き締めてくれた。


「そうだな…帰ろうか」

「うん」


奏さんの匂いに包まれる中頷いた。


「帰ろうね、奏さん」

「…わかった」

「りおさん、下駄が」

「あ、」


押し倒された時にどこかに飛んでしまった。


「ありました。しかし、鼻緒が切れて」


切れた鼻緒を見せて榊さんが苦笑いしてる。
どうしよう、下駄が。
迷ってたら奏さんがいきなりお姫様抱っこで掬い上げた。


ひゃっ!


「鼻緒が切れたら歩けないだろ」

「だけど……」

「いいから大人しくしとけ」

「でも、奏さんは怪我をして…」

「このぐらい大したことねえよ」


歩き出す。
すぐに思い出したかのように振り返り、奏さんが転がった3人を見下ろした。



「おまえら、このぐらいで済んで運が良かったな」