「若、戻りましょうか?」
榊さんがわたしの乱れた浴衣をさりげなく直してくれた。
埃も払って帯を締め直してくれた。
「りおさんの傷の手当てもしねぇといけねえしな」
仁さんも惚けた顔でそう言った。
「行きましょうか、若」
「奏さん、ね、帰ろう?」
花火を観ることが出来なくてがっかりしたけど、必死で探してくれてたんだってわかって嬉しかった。
花火大会はまたすぐにあるからまたその時にみんなで観られればいい。
それより…
奏さんのナイフを掴んだ左の手―――
「もうこんなことしたらダメだよ…」
大事な奏さんの指。
血だらけで痛いのに、そんな状態で殴ったりしちゃダメだよ。
手が震えた。
その手でそっと奏さんの手を取る。



