奏さんが一歩進むと男が尻でズリズリと下がり、
バキッバキッ
奏さんが拳のまま馬乗りになって殴り続けた。
「待て、やめっ、」
「許せねえな」
「頼む、止めっ、」
「悪いがそれはできねえ」
歯が折れて口の中が血だらけになる。
くいしばることが出来ずに折れた歯が飛び散った。
「お、お願い。奏さんやめて!」
顔の形が変わっていく男のあまりの悲惨な姿と、血に染まっていく奏さんの拳に耐えきれず思わず奏さんに抱きついた。
「止めるな。こいつらは」
だって、ダメだよ。奏さんの怪我した手が―――
「…ダメ」
お願い。
奏さんがこれ以上傷つくのは嫌!
わたしが無理を言って花火大会に行きたいなんて話しちゃったから。
ひとりはぐれるような行動しちゃったから…
―――だから
お願い。わたしが悪いの。
奏さんの怪我をひどくしないで…



