奏さんがわたしから玲央を抱き取りその小さな手にキスをした。
「玲央」
呼び掛けるとパチリと目を開けて黒曜石の瞳を覗かせた。
まるで自分の名前を理解してるかのように星のような円らな瞳で見上げる。
「玲央」
いい名前をもらったね。
ほら、みんなが玲央を見てるよ。
奏さんがみんなに玲央を御披露目してる。
「親父、抱いてやってくれないか?」
お父さんは慣れない手つきで奏さんから抱き取った。
「玲央か、やんちゃしそうな名前だな」
抱いた膝の上でくるくるとした瞳が見つめる。
「玲央坊っちゃん、ですか」
榊さんが復唱する。
「いい名前ですね。若も奏でると書きますし、音の響きを表す名前はぴったりです」
紳士的な笑いを口元に浮かべる。
仁お兄ちゃんも毅さんも、
「玲央坊っちゃん」
と、お父さんに抱かれた玲央を覗き込む。



