若恋【完】





―――きれいな名前




奏さんに呟くと、口の端だけ上げて笑った。


「だろ。また字がいいんだよ」



奏さんがわたしの手のひらにそっと文字を書く。

名前とその意味。
そして漢字を教えてもらった。



「素敵な名前だね」


奏さんの耳元に返すと目を細めてわたしを見た。


「りおはそう言ってくれると思った」



そう言って、奏さんは一息にグラスを飲み干した。



「若、」

「ん。」

それが合図だと言うようにわたしの側から立ち上がる。

用意していた紙を広げて壁に張った。




『命名 玲央』





―――玲央


美しい鈴の音の中心。