その後に。



看護師さんが呼んだ警察に黒ずくめの男は引き渡された。


もう抵抗する気力もないまま、順子さんや奏さんやわたし、みんなが見ている前を項垂れて通りすぎていく。



順子さんが子供を抱き締めたままじっとその姿を見送る。



「金持ちとか関係なく好きだったの」



ポツリと溢した言葉はわたしには切なく思えた。


過去の恋だとしても、恋した想いは本物で消すことなんてできない。



「この子はどうしても産みたかったの」



パトカーに押し込められる黒ずくめを見送る順子さんの頬からひとすじの涙が伝った。



「わたし、本当に好きだったの」



過去の恋は振り向かない。



順子さんは涙を拭って顔を上げた。



「りおさん、大神さん、いろいろありがとう」


彼女は力強く笑んだ。


そして。

わたしは祈る。



―――順子さんと子供が強く生きていけますようにと。