「あ?」
「俺はあの女が勝手に産んだガキを始末したかっただけなんだよっ!」
「なんだと?」
奏さんは眉をひそめる。
「あれほど堕ろせって言ったのに、あの女がひとりで育てるから産みたいって。そんな勝手なことしたんだよっ!」
まるで吐き捨てるような言い方だった。
「どうせ金目当てなんだろうって百万渡そうとしたのにあの女が受け取らなかったんだよっ!
貧乏人は黙って受け取っときゃいいものを、金を受け取らねえあの女が悪いんだよっ!」
「あの女って、あそこに伸びてる女か?」
奏さんも合点がいったみたいだった。
わたしは順子さんがしゃがみ込んでいる新生児室の前に歩きそっと彼女を揺さぶった。
幸いにも揺さぶっただけで、パチリと目を開いた。
順子さんがみんなから注目を浴びてるのにびっくりしたみたいだけど、それに反応する間を与えずにわたしは順子さんにおくるみに包まれてる赤ちゃんを差し出した。



