若恋【完】




キュッと抱きしめたまま顔をあげる。

目の前では、黒ずくめと奏さんが対峙している。




「おまえ、どこの組のもんだ?」

「………」

「俺の子を拐ってどうする気だった?」

「………」

「答えろ。返答によっちゃ生かしておかねえ」

「………」



奏さんの髪が逆立ってる。
わたしの前ではいつも優しくて、猛獣になってる姿を見ることはない。


見たことがあるのはほんの数回。

仲間を守ろうとしたときに牙を剥く。




「俺の子をどうする気だった?」

「……ちが、う」



「あ?」

「…ちがう。おまえの子じゃない」

「あ?何を言ってる?」




黒ずくめが発した言葉はわたしにもよくわからなかった。


「ふにゃ、ふにゃ、」


わたしの腕の中でかわいい天使がグズって泣く。




―――あれ?