「仁お兄ちゃん、あの人、狩野を押さえて」
「なに?」
「狩野はまた奏さんを狙うわ。早く」
「何を言ってるんだ、りお?」
「いいから仁お兄ちゃん早く」
イライラが募る。
わたしの視線に気づいてニヤリと嘲る笑いを見せ、森内狸が引き摺り出された扉を開きゆっくりと会場を出ていく。
森内が失敗したことで、新たな第二、第三段の罠を仕掛けにいく。
「あの人が笑ってたの。森内がお父さんに毒が入ってたのを飲めるかってみんなが注目してた中でひとり」
狩野を追ってわたしが動きだそうとするのを、側にきた奏さんが止めた。
「よせ。りお、行くな」
「だけど、奏さんがこのままじゃまた狙われる!」
「おまえがあれを黒幕だと悟ったように、榊も悟り、もう手は打ってある」
だけど黒幕だってわかっても証拠がない。
いくらでも狩野が逃げおおせることができる。



