すっ。 今まで庭の方を向いて座禅を組んでいた奏さんのお父さんが音もなく立ち上がった。 わたしの隣に座っていた奏さんも立ち上がる。 「………」 「………」 ―――なに? 一瞬、ふたりの間に無言の会話が成り立ったような気がした。 「庭に出ろ」 奏さんのお父さんが響く声で命令して、奏さんがスーツの上着を脱いでわたしに渡した。 「行ってくる」 「…奏さん」 見上げるわたしに奏さんはこれ以上ないってくらい優しい表情を見せた。 「俺は負けたりしない」