「…手帳に」
「あ?」
「カバンの中にある…手帳に」
「手帳がどうかしたのか?」
「それを見て」
わたしの口から伝えるよりも奏さん自身に見てほしいって思ったから。
「手帳に大事なものがはいってるから、それを見て」
「?」
奏さんの黒曜石の瞳が揺れた。
「奏さんにみてほしいものがあるの」
わたしがカバンから手帳を取り出して渡すと、奏さんの長い指がパラパラとページをめくった。
そして三枚の写真を見つける。
「………」
無言で一枚一枚見つめる。
わたしも奏さんを見つめる。
「………」
無言のままの奏さんの腕に引き寄せられて力いっぱい抱きしめられた。
小刻みに震えてる指が、肩が、その体が熱を帯びている。
「……俺の、」
「―――うん」
背伸びして奏さんの抱きしめてくれてる体を抱きしめかえす。



