屋敷を出てすぐ、わたしはタクシーを拾ってあらかじめネットで調べておいた産婦人科に行った。
待合室には大きなお腹を抱えて絵本を読んでいるママと小さな女の子の姿があって。
絵本を指差ししてる手のひらなんてちっちゃくて。
―――可愛いな
見ているだけで小さな子供の柔らかなホッペを撫でたくなる。
フフッ、
奏さんとわたしの赤ちゃんもこんなふうに可愛かったりして…
妄想に耽っていたら。
「天宮りおさん、診察室へどうぞ」
名前を呼ばれて心臓が跳ねた。
覚悟はしてる。
もうなにがあっても驚いたりしない。
「今日はどうしましたか?」
とても柔らかな笑顔で尋ねてくれた先生に、丸眼鏡さんの故郷で小児科の先生に言われたこと、つわりらしき症状があったことを話した。
穏やかな瞳でじっとわたしの話をきいてくれた先生はにっこり笑って診察台に乗るように促した。
「怖くないですよ。わたしがそばにいますからね」



