「りお、風邪だったのか?」
わたしが診察室から出てくると奏さんがわたしに上着を掛けてくれた。
「あ、お嬢さん、薬を忘れてるわよ」
先生が気を回してくれてわたしに薬を処方した振りをしてくれた。
「中身はビタミン剤なの」
こっそりと耳打ちしてくれてわたしの肩をポンって叩いた。
「ただの風邪みたい」
「そうかよかったな」
何にも疑わないで奏さんが安堵の息を吐き出した。
ごめんなさい、奏さん。
嘘をついたわけじゃないの。
まだはっきりしてないし、奏さんには知られたくない。
困らせたいんじゃない。
ただどうしていいのかわからないだけ。
頭の中がぐるぐる回ってる。
「少し寒かっただけだろうから大丈夫だよって」



