「もし…あなたのお腹の中に赤ちゃんがいたとして。あなたはその命を闇に葬りたいと思うの?」
わたしはブンブンと首を横に振る。
絶対にそんなことはしない。
命を闇に葬りたいなんて思わない。
奏さんの赤ちゃんがいるかもしれない。
奏さんの分身がわたしのお腹にいるかもしれない。
その命を消すだなんて、わたしにはできない。
「だったらよく話あうことね。若くても育てようと思えば育てられるものだわ」
わたしが中絶する意思がないことを知ると、先生はとってもきれいな笑顔になった。
「念を押すけれど、わたしは産婦人科医ではないわ。妊娠してるかもしれないわよって言っただけだからね。旅から戻ったら、ちゃんと専門の病院へ行ってね」
「はい」
「体を大事にしてね」
「………はい」
―――奏さんの。
赤ちゃんがお腹にいるかもしれない――――
どうしたら。
どうしたらいい?
わたしはどうしたらいい?
―――誰か教えて。



