「奏さん、なんか寒いよ…」

体がざわざわして頭が重い。

「…寒い」

奏さんにしがみつくとわたしの額に手を当てて渋い顔をした。


「毅、今日はどこにも寄らなくていいからこのままホテルでも旅館でも行ってくれるか?
りおが熱を出した」


「熱?」

そういえば関節のあちこちが軋むように痛い気がする。
自分では熱を出してるって感覚がないんだけど。

「わかりました。このままホテルへ向かいましょう」

「おい、先に医者に診せた方がいいんじゃないか?」

仁お兄ちゃんがタクシーの運転手に、近くに医者があるかを尋ねると、小さな病院ならあるとのことだった。

「そこに行きますか?」

気を使ってくれて行き先を変更してくれた。

みんなにそんなに気を遣わせたくなくて。

「寒気するだけだからお医者に診てもらわなくてもクスリ買って飲んで寝てれば明日にはすぐに良くなるよ」

わざと明るく言った。


「みんなの言うことを黙ってきいとけ」