ふん。

奏さんが不機嫌な横顔を見せて片手でわたしの腕を引いた。

腕の中に収まる。



「毅、仁がりおに近づかないように見張っとけ」

「若、やきもちがすぎるとりおさんに逃げられますよ」

「じゃ逃げられないように檻に入れて鍵を掛けておくさ」


奏さんが笑うと仁お兄ちゃんも毅さんも笑った。



「さて、行きますよ」



空港からタクシーに乗り、丸眼鏡さんの故郷へ。


市街地を抜けるとずっと長閑な田園風景が続いてて、どこまで行ってもその景色かななんて思い始めた時。

「着きましたよ」

タクシーの運転手が車を停めた。

小さなお寺を囲むように桜の樹が並んでいる。

柔和な表情をした和尚様がわたしたちを出迎えてくれてすぐに本堂に通された。

本堂は外観より広くてきれいだった。



「丸井さんはあなた方に感謝しているのでしょう。ほら、見てください」

和尚様の読経が終わると本堂の窓を指差しして微笑んだ。