「丸眼鏡さん!」

小さく流れた赤いもの。

目を見開いてみたわたしの手が伸ばした先を掠めて「ぽたり」滴り落ちた。

「榊さん!」

ぐらりと傾ぐ体を榊さんが半歩戻って支える。

「しっかりしてください!」
 
「かまわないでください、大神さまを早く」

グイと袖で口元の血を拭い、榊さんの支えた手を滑らし外す。

「行くなら一緒です!」

撃たれた背中にはドクドクと赤黒い血がスーツに染みていって、わたしの鼓動が速くなる。

手で押さえても吹き出す血が止まらない。

「止まらない…」

榊さんが丸眼鏡さんの持っていた銃を取り上げて、迷いもなく後ろにいたごつい男を狙い撃ちした。



「とにかくこの場を離れましょう」


血で濡れる両手で丸眼鏡さんを支え、先日銃撃戦で傷を負った榊さんとふたりで背負うように走り出す。