榊さんに連れられて、龍神会のビルの中を歩いていくと、エレベーターの前で丸眼鏡の初老の男性がひとり背筋を伸ばして立っていた。

そのひとは何も言わずに、榊さんとわたしを通してエレベーターの七階のボタンを押して、
「龍さんがお待ちしております」
と、頭を下げてわたしたちを見送る。



「りおさん、これからが勝負ですよ。若を奪還できるかはりおさんの気持ちの強さにかかってきます」


「わたし、負けませんから」


「りおさんは、そうでないとね」


クスッと柔らかく笑い、七階で止まったエレベーターを降り、榊さんは足を少し引きずりながら歩き出した。



「―――りおさん、若を頼みます」