「若も同じことを言っていましたよ」

クスクス
榊さんが柔らかく笑った。


「若は自分の身を自分で守る術を知っていますし、いざとなればこのわたしがいるので」

「榊さんが奏さんの盾になるってこと?だけど、それは」

「わたしはそのためにいるんですよ」

「俺もそうだ」

榊さんと仁お兄ちゃんが自分の命を奏さんの身代わりに?
今までも榊さんや仁お兄ちゃんは自分の身を盾にしてきたんだろう。
だけど…


「奏は自分をかばうなと言う。だが俺の守るべき者はひとりだからな」


にやりと仁お兄ちゃんが皮肉な笑みを浮かべた。


「若は優しすぎます。俺の盾にはなるな。己を大事にしろと。若はそういう男なんです。……だからこそ、若を守りたい。そして若が大事だと思うりおさんを守りたいと思うんです」


染みるような言葉をくれる。
ここまで思われる奏さんは幸せだね。


「若がいてくれたから今のわたしがいるんです。若はわたしのすべてです」

榊さんは一旦車を停め振り返った。


「一度は死んだ身です。これから先も命をかける相手はひとりです」