これを見ると……


「なんか…よかった……」


前までここにいたのはあたしなんかじゃなかったのに…、
奇跡としか思えない。


「また、触れるんだね…」


あたしは左側に立つ彼の左腕に軽く触れた。
手袋とコートが感触に邪魔をするが、十分だったから気にしない。


「それに、なんていうか……気持ちとか心の面でも近づけてるんだよね?」


確認するように上を向く。

諒太は右手でネックウォーマーを顔から下げた。
そして微笑んで口を開く。


「そうだな」


あたしの口も自然に弧を描いて、彼の腕から手を離す。

でもそれは離れることはなかった。

それどころか、
また月明かりに照らされた顔は赤く染まっていて、手にはギュッと力が加えられた。

あたしたちの今の距離は―――0cm。

物理的なその距離だけは今も前も…きっとこれから先も変わらない。

だけど、今の距離は心も想いも含まれている。


それがとてつもなく嬉しかった。


何回も諦めようとした。
叶わないって、思ってた。


物事の筋道が通ってなくて、矛盾している。

それは、ただ単に距離と心の問題だけじゃなくて、

身辺のことは分かるのに、一番大事な気持ちが分からなかったことも、

身長が小さいのに態度が大きいあたしも、
背が大きいのに声が小さい彼も。


まだ大人に成り切れていないあたしたちの矛盾を、別の言葉にするなら、『ちぐはぐ』



あたしが十年も迷ったこの迷路のような恋は、


――――ちぐはぐ遠距離恋愛――――


それでも、どんなに遠くてもいつもどこかで願ってた。

もうこの距離は広がらないはず。

ケンカをしても、絶対仲直りする。

今度は物理的な距離が広がったりしても、そのときは絶対想いは離れない。


例え生まれ変わっても、いつもいつもあなただけを探すから。


「覚悟…してよね」

「は?」


そのときは、変わらずまた「真白」と呼んで下さい。

よろしくお願いします。



END