(はぐれちゃった…)
とりあえず、目立ちやすいように人込みの中から出て駅からちょっと歩いたところのベンチに腰掛けた。
携帯を開いて、電話帳を見てみる。
映し出された『諒太』の文字。
アドレスを交換した以来、選択されることがなくなったそれ。
何年ぶりになるかわからないそれを押す指は微かに震えていたかもしれない。
ゆっくりと耳にかける。
コール音が二回響いて、通話モードになったことにホッとする。
「もしも『どこにいんだ!』
途端、耳を突き抜けた大声。
こんな大きい声を聞いたのは久しぶりで、あたしは肩をも震わせた。
「ごめん、知り合いに会ってたらはぐれちゃって…」
『ったく、で?どこにいるんだよ』
「駅を出て正面にあるいたとこらへんにあるベ…「ねぇー、君一人ー?」
あたしは途中で言葉を切らし上を向いた。
自分の体に影がかかって暗くなったから。
思った通り、三人の男が立っていた。
「ベンチに座ってるから…「無視かよ」
男が言っている通り、あたしは無視している。
前にもこんなことがあったと思い出しながらも、諒太との会話をやめなかった。
「そんで『なぁ、誰かいるのか?』
「ねぇ君名前は?」
「下向いてないで顔見せてよー」
『大野…?』
「ちょっとめんどく「はい没収ー」
あたしの手からスルリと抜けだした携帯。
それは知らない男に奪われたからで、思わず立ち上がる。
「ちょ…っ!帰せよ!」
「あー、もしもーし」
男は勝手に諒太と会話し始める。
周りの男はあたしを押さえ付けあざ笑った。
「彼氏かなー、君ー」
『は?てめー誰だよ』
諒太の声は大きくなったようで、あたしの耳にも届いた。

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