少し前を歩く背中。
もう掴めないのかな……って改めて思う。
隣になんて並んでられる自信もなくて、後ろから眺めていた。
駅に近づくと、人も増えてきた。
見失いそうになるのを必死に堪えて、人の波を突き進む。
その時……
ドンッ!!
「あっ……」
あたしは一人の人にぶつかった。
「すいません」と謝って顔を上げて見えたのは、鎌瀬―――
「……大野」
「ご、ごめんな?大丈夫だった?」
「あぁ、平気。じゃあな」
「あ、待って!!」
あたしは慌てて鎌瀬を呼び止める。
鎌瀬にはまだ―――伝えてない。
「告白、の件だけど…」
声が震えていた。
心が締め付けられて、喉が締まる。
だけど、(言わなきゃ…)その考えがあたしを支配していて、諒太のことも忘れていた。
「ごめんなさい……」
小さい声で頭を下げた。
鎌瀬は分かっていたのか、案外冷静で笑ってくれた。
「謝らなくていいよ」
「……鎌瀬」
「大野の気持ちをちゃんと大野から聞けて良かった」
そう言った鎌瀬。
あたしも、もう一つ言わなきゃならないことがある。
「ずっと、見ていてくれたんだよね?」
「……っ」
この言葉に、鎌瀬はハッとしたように目を見開いた。
その反応で、(言って良かった)と思う。
「あたしを、……好きになってくれて、ありがとう」
最後は精一杯の笑顔で。
それは、みんなが教えてくれたことだから。
「どういたしまして」
鎌瀬はペコッとお辞儀をして、人込みの中に消えていった。
一人になって、ようやっと諒太のことに気づく。
周りを見渡しても姿なんてあるわけがない。

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