ケーキの取り合いから始まり、ケーキの突きあいで終わった。
九人全員でムキになって奪いあった楽しい時間は、すぐに終わってしまった。
ポケットの中で携帯が震えて、あたしはデイスプレイ画面を覗く。
「………」
口を閉じたのは、あたしのわがままの現れだった。
母さんからの電話は、正直今はいらない。
父さんとの時間が終わってしまうタイムリミットが始まる証になる。
静かになったあたしに、父さんが優しく話し掛けた。
「夕南か?」
心臓がまた跳ね上がったから、あたしは肩をも震わす。
頷きたくはなくて、無言で父さんを見た。
全てを分かってくれたのか、苦笑いを浮かべてあたしの背中を撫でた。
「出ていいんだぞ?」
その言葉には首を振った。
ここで出たら、自分を嫌いになる。
大方、早く帰ってこいという連絡だろう。
母さんにとって道場は、あたしと父さんの唯一の繋がりという意味もあるのだから。
「どっか行くのか?」
「む…、諒太ん家でクリスマスパーティー」
父さんは『諒太』という音に反応した。
嬉しそうな顔で聞き直す。
「諒太!!元気にしてるか?」
「うん。元気だよ、将ちゃんも、智春さんも……みんな、ね」
「そうかー!!また会いたいなぁ」
(会えるよ)って言いたくて、胸が締め付けられた。
あたし一人の言動で、大好きなひとたちを悲しませたくはなかった。
「じゃあ、帰るか」
「えっ?」
開き直ったようにいう父さん。
裏返った声であたしは目を丸くした。
「送るよ、真白」
「……もう少し居ようよ」
「ダメだ。諒太も待ってるんだろ?」
「3時からだから大「もう2時半だぞ」

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