またこれを自分の涙で潤しそうになって慌てて校舎の中に入る。
どうして素直に喜べないのか。
その理由は簡単。あたしだって分かっている。
そして馬鹿な期待を無意識にしていたことにも同時に気づいて、自分を押し殺すことしかできない。
『話、あるから』
あいつは海来ちゃんが好き。
そう分かっていたはずなのに…どうして自惚れるんだろう。
(傷つけてんのは紛れも無く、自分自身じゃない――)
愚かさの中にうずくまって身動きなんて取れなかった。
『母さんが、またパーティーするらしい。から』
その言葉でガラスがパリンと割れていったんだ。
どうやら、あたしたちの関係は変わらないらしい。
距離は縮まる…でも、恋愛に関しては広がるということだ。
いや、むしろ道が無くなる。
切実な心を持った乙女はそこで息絶えていくのだろう。
村野からの誘いは、クリスマス。
―――聖なる日に告白って、なんてありきたりなんだろう。
そう思ってしまったのは間違いだったようだ。
『幼なじみでいよう』
きっと、そういう意味が込められているに違いなかった。
というか、あたしの中ではそんな風にしか聞こえない。
処理できない。
だから、あんな微笑みを見せてほしくなかった。
幼なじみにそんな笑顔は必要ない。
優しさも、温もりも、愛情も、誘いも…
そんなもの、全部全部いらない。
あたしに注がれるものなんかじゃない。
海来ちゃんにしてあげることのはずでしょ?
あたしは“恋愛対象外”の幼なじみ。
そう区別しているなら、これ以上触れないで…
あたしを惑わさないでよ………っ
一日中そのことが頭に覆いかぶさる。
誰の話も耳には入らなかった。
家に帰ると7時近い時間にも関わらず、小六の弟はまだ遊びに行っているようで誰もいない。
「…ただいま…」
空しく響いたその声は自分で拾って自室に入った。

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