腕を振り下ろして村野を睨む。
さっきまでドキドキしていた自分が馬鹿らしかった。
(期待させないで)
そう言いたくなって口を結ぶ。
村野が不機嫌そうな顔をしてたから…、
あたしに抱き着いた男子を剥がしたときの表情はものすごくかっこよかったから…、
だからこんな思いになるんだよ。
そんなの――――ヤキモチしてるようにしか、見えないんだよ……。
「話、あるから」
「は?」
細めていた鋭い目を戻す。
短い単語は、あたしの怒りを鎮めた。
低い声が支配して言葉が見つからない。
どうして必要なときにだけこんな風になるんだろう。
「もう…やだ」
そんなちっぽけな思いだけがすんなりと転げ落ちて、またあたしを弱くする。
こんなこと言ってもどうしようもないのは充分分かっているし、これはあたし自身への言葉。
村野はまた無言で腕を離した。
ブラン…と力無く落ちる右腕は痺れるように動かない。
「………クリスマス」
「…クリスマス…?」
頭上から聞こえた声を受け取って、村野を見た。
「母さんが、またパーティーするらしい。から」
途切れ途切れの言葉がまたあたしを息詰まらせる。
「来いよ?」
「…………っ!!」
片眉を上げて、優しく微笑んだ。
(…なんで…その顔をするかな……)
村野はまた普通の顔に戻って校舎の中へと入る。
視界に入る広い背中はあたしがずっと追いかけてきたもの。
また、触れる日が近づいているかもしれないというのに――――
あたしの心は…渇ききったままだった……

![100日愛 [短]](https://www.no-ichigo.jp/assets/1.0.794/img/book/genre1.png)