「ははっ、残念でした」
あたしは榊原くんの胸を軽く叩きながら笑った。
でもその声は、静かにトーンが下がる。
「先輩?」
「ゴメンね…」
「何言っ「榊原くんの初恋の相手があたしだなんて、申し訳ないよ」
「え?」
かおりちゃんがメールで教えてくれた。
あたしがかおりちゃんを校庭で守ったときに榊原くんが好きになってくれたこと。
そしてそれが、初恋だったこと。
あたしの言葉に榊原くんは舌打ちをする。
きっと(余計なことを…)とでも思ったのだろう。
「気にしないで下さいよ」
「でも…」
初恋は、大切にするべきなんだ。
と、あたしは思う。
自分の初恋の結果がこれだから、ってのも理由だけど…
初恋は一番純粋な恋になるはずだから…。
「それに俺は、後悔なんかしませんよ?」
「えっ」
「真白先輩が、初恋の相手で良かった」
もう一度、ギュッと抱きしめられた。
榊原くんの腕の中で、薄ら笑いを浮かべる。
こうしていることで、彼が少しでも幸せになれるのだろうか…?
それならいいのだけれど―――
いつしか男が怖かった時期もあったけど、もう全然平気だった。
いつ克服したのかは分からないけど、それはきっと、
あたしを好きになってくれた人のおかげ。
あんなのだけじゃない。
温かくて、誰かを愛せる…世の中にはそういう男がほとんどだと知れたから。
彼等があたしに何かをしてくれたように、あたしも何かをしてあげたい。

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