でも、欲望なんていう汚いものだけじゃなかった。
やっぱりあたしは幸せを求めていたし、高杉先輩を好きになりたかった。
あたしを愛してくれる人を、あたしも愛したかった。
「そういえばさ」
先輩はふと思い出したように声を出す。
あたしはもう零れなくなっていた涙を拭い、先輩と目を合わせた。
「こう…あ、鎌瀬にも、言われた?」
「へ?何を?」
「うー…んと、好きだって」
先輩は一瞬悩んだけれど、結局口に出した。
そしてそれは、あたしへのもう一つの壁だった。
「はい…」
「そっか、あいつも…」
「先輩、知ってたんですか?」
「あぁ、真白ちゃんを好きになってから気づいた」
「え…?」
先輩はまた悲しい顔になる。
苦笑いで優しく教えてくれた。
「あいつは、俺よりも前から真白ちゃんのことを想っていた」
その言葉に、あたしは固まった。
先輩が、初めてあたしを好きになってくれた人だと思っていたのだから、無理はないけど――――
まさか、
鎌瀬が――――
「あいつさ、俺が初めて真白ちゃんのことを聞いたとき…悪い風にしか説明してくんなかったんだ」
先輩は悲しい顔ではなく、優しい顔になった。
「でも、今思えばそれは、
真白ちゃんを、好きにならせないために
だったんだろうな…」

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