でも今は、体が感じる全ての感覚を追い払いたい。
これは、否定しなければいけないことなんだ。
だって、
あたしはもう“諒太”を好きにはならないって決めたんだから。
誰も信じない、
誰にも頼らない。
だから、
こんな気持ちなんて
存在しないはずなのに……
村野の腕が当たる度に、心臓は有り得ないくらい飛び跳ねた。
もう一度、この人の隣に入れると思った
――――入学式の日と同じように
一人用の傘に二人はやっぱり無理があるようで、
あたしの肩ははみ出し濡れていた。
だけど当のあたしはそんなこと気づいていない。
ただ必死に、今の状況から逃れるのを祈るばかりだった。
(このままだったら、あたし…限界)
複雑にこんがらがった気持ちに、小さい穴が出来ていく。
自分の本当の気持ちは、一つなんかじゃない。
たくさんある。
だからこそ、選び切れず、絡み合っているんだ。
そんな気持ちの中は真っ暗闇で、決断を迫られ続けたあたしは縮こまっていた。
抜け出したい。
だけど、抜け出したくない……。
それと同じで、
“諒太”を好きになりたい。
それをもう認めたい。
“諒太”を好きにはなりたくない
認めてはいけない。
この気持ちが解れるときには、あたしはどちらかを選んだとき。
複雑さの中に空いた、小さい穴は解れ目で、
決断の鍵。

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