(もうちょっと大人しくなってから出よう)
あたしは後ろのフェンスに寄り掛かった。
髪の毛から、ポタポタと水滴が落ちる。
それを意味もなく、ぼーっと見つめていた。
風が強くふいて、見をよじらせた時だった。
「何やってんの?」
頭上から声が降り注ぐ。
あたしは勢いよく顔を上げた。
「むら…の…」
そこには、ちゃんと傘を持ってきた村野が立っていた。
あたしを見て口を開ける。
「傘、忘れて…」
「へぇ…」
「………」
「………」
数秒の沈黙の後に聞こえたのは、
耳を疑うようなものだった。
村野はあたしから顔を逸らす。
そして、
「入れば……?」
「へ……?」
そんな声が耳に入ったと思えば、
突然腕を引かれて、軒下から飛び出てしまった……
あたしが逆に飛び込んだのは村野の傘の中だった。
「ちょ……」
あたしは上を見上げたが、村野はこちらを向くことなく歩き出した。
仕方なくあたしも村野の隣を歩く。
一つの傘に、二人が入っているこの状況は…
紛れもなく『相合い傘』
それが、こんなにもドキドキするのだと知った。
近い距離、
触れ合う体、
篭る熱……。

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