だけど、これは仕方がないこと。



(お願いだから、触れないで……)



あたしの心が、弱々しくそう動く。


すき間風が吹いたように寒さを感じた。

先輩は口を閉じる。


「戻りましょう、先輩」

「あぁ……」


先輩がここにいるってことは、あたしが村野と何かあったことを知ったから。

静かにそう呟いた先輩の言葉を背中で受け止め、あたしは重いドアにグッと力を入れ開け放った。

もうあの集団はいない。

ホッと一息をついた。



ただただ願うのは、さっきの気持ち。




「大丈夫?」
とか、

「辛かったね」
とか、そんな言葉はいらない。


同情も、哀れみも必要ない。

それはあたしをただただ蔑むような言葉にしか聞こえないから……。



「頑張ったね」なんていう労いの気持ちだって、あたしにとっては気休めにもならないの。



だから、


放っておいてほしい……。




中途半端な感情も、心配も、


あたしを傷つけるだけ――――……





自分を自分でしか守れないなら、殻の丈夫さを増やすだけ。

もう外の声なんて聞こえないくらいにまで、あたしは縮こまる。




本当のあたしなんかに気づかないで。


隠し通させて。




誰も信じない、
一人ぼっちの世界で生きるから。





期待や、
喜びも…

理不尽な苦しみや、
辛さも…



あいつを信じることで感じるなら、あたしはもう終わりにしたい。





ねぇ諒太…………、






あたしたちは、





寄り添うことなんて、





もうできないの…………???