高杉先輩以上に眠たそう。
そんなあどけない姿に一人また笑みを戻す。
村野を目で追いながら、あたしの体も教室に戻ろうと向きを変えていく。
――――――そんな時だった……。
車の扉が軽々しく開き、中にはあたしの学校の制服姿が見えた。
優雅に下りる、少女……。
校門にいる誰もが口を開けてそれを見ていた。
可愛いらしい女の子。
少し長すぎる紺のジャンパースカートを揺らす。
髪はショートでストレート。
慎重は分からないが、多分あたしよりは高い。
その子は前を向くと、パッと表情を変えた。
助手席から、お母さんらしきセレブリティー溢れる女性がその子のバックを持ちながら下りた。
でもその子はお母さんには気づかず、何かを大きく口を動かして言いはじめた。
さぞかし大きい声なんだろう。
そして、あたしは何を言ったのかが分かってしまった。
「りょう……た………」
女の子は口を大きく嬉しそうに開けながら、
村野に抱き着いた。
あたしの体は動かない。
村野は向こう側を向いていて、抱きしめてこそはいないが…
表情は見えない。
女の子はギュッと村野を抱きしめて離れない。
「やめ…て…よ」
小さく、無意識から出た声。
何で自分がこんなことを思っているのかなんてわからなかった。
でも、中途半端な感情じゃない。
優しく村野に微笑みかける女の子。
村野の頬に手をあてて、また喋りかける。
「やだ……」
(やだよ、あんなの。見たくない!)
なのに動かない体。

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