ずりずりと引きずられ、教室の斜め前にある被服室へ。
「おい、まじで無理だから」
「んなこと言ったって、決定事項だぞ」
「何で俺が…」
「人気だからな」
(知るかそんなん)
やる気のなさから俯く姿勢で被服室へ。
そして今に至るわけ。
「まぁそんな肩落とすなって…あっ」
突然声を出した雄弥につられて俺も顔を上げる。
そこには見覚えのある背の高い笑った女と、小さい女子。
「大野先輩だよな、あれ!」
雄弥は興奮したように俺に囁く。
「そー、だな」
(何でこんなとこにいるんだ?)
まさか先輩が立候補?
―――それなら俺、頑張れるかも…。
なーんて一人うつつを抜かしていたとき、隣の雄弥がついに大野先輩に話しかけた。
「あの、大野先輩ですよね?」
「えっ?あぁ、はい」
「俺、一年の雄弥って言います!」
「は?」
「先輩のファンです!」
雄弥がそういった瞬間、先輩以外の周りの人がプッと吹き出した。
当の本人は頭から髪の毛がぴょこぴょこ出てるみたいに目を点にしている。
「真白ちゃん、本当に知れ渡っちゃったわね」
お団子にして髪をまとめた三年生の役員がクスリと笑う。
「や、やめてくださいよ先輩」
「コウも可愛そうに。まーたライバルが増えちゃって」
眉間に皺を寄せながら、でもおもしろ可笑しそうに大野先輩を下から見る。
二人は知り合いみたいで、仲が良さそうだった。

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