一人動かない村野。
俺は悔しながらも微かな希望を持って腕を叩いた。
「お前、幼なじみだろ?やってみろよ」
村野は一瞬嫌そうな顔を浮かばせたが、
山内たちを退かして大野の前にしゃがんだ。
慣れた手つきで大野の手を取る。
「おい」と声が出そうになるのを堪えた。
そのあと、「大丈夫だから」と村野が呟くと、展開は速かった。
今までのが嘘のように大野は声をだして小さく泣きはじめた。
「…りょう……っ…たぁ……」
子供のように聞こえた。
『りょうた』って言ったのが、俺の中でこだまする。
泣きじゃくる大野を見た俺らはとりあえず帰ることにした。
でも、気になってしょうがなくて…
山内たちと隠れて覗いた。
しばらくみてると、大野が村野に抱き着いて…村野も背中に手を回して。
正直、見てられなかった……。
俺らはその場を離れる。
「大野も、やっぱり女子なんだな」
陵本が静かに呟く。
各々がそれに頷いた。
「一人で倒す姿はかっこよかったな」
「でもやっぱり怖かったんだな」
「俺らは、何もできなかった」
口にしたのは自分。
だけどもっと居心地が悪くなった。
何もできなかった―――それが事実で。
大野を落ち着かせたのも、安心させたのも、
………抱きしめたのも…。
全部全部、やったのは村野だ。

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