名前の確認は聞かれていたようで、肘を付きながら俺の方を向く。

黒い髪はなびくように前に垂れた。

その姿が、何となく綺麗に思えて……。
俺は目を見開く。


「何?」

「あ、いや…。ましろでいいのかなって…」

「あぁ、名前か。うん、それましろって読む」


興味なさそうに答えてくれた。

だけでその手には俺と同じクラス表が握られていて、大野は片手で器用に開く。

黒板と、その紙を見比べながら。

大野は「ふーん」と言って、俺の方を見た。


「鎌瀬、だな?」

「あ、あぁ」

「よろしくね」


その瞬間、



俺は時が止まったような気がしたんだ。


男らしい喋り方だけど、優しい笑顔の表情はやっぱり女の子で…

見た目とのギャップがすごい。

そんなところにも、惹かれたのかもしれないが……




俺は確かに、この時から大野を意識するようになった。




だけど、こいつ……俺より男だったりするわけで…


「おい鎌瀬!前見ろ前!」

集会中に喋ってたら丸めた冊子で頭叩かれたり…


「大野、8.05!」


俺より50m走の記録が速かったり…


「え?!真白握力42?!」


男子顔負けの馬鹿力を持ってたり…


「真白すごい!頭もいいんだね!」

「別に?」


頭まで良くて………