〜鎌瀬side〜



目の前では火花が散りはじめた。

この一年はまだいいとして、何で村野まで大野を守るようなことを言ったのか。

それがひっかかる。

(もしかして、大野が―――好きなのか?)

自分で言ったのに、嫌気がさした。


(ったく、この一年といい村野といい……
なんでいきなり…)

なんかわからないが最近大野がモテだした。



俺、鎌瀬はサッカー部員だ。

大野が窓からいつも顔を出して俺達を見ていることを知っていた。




入学式の後、俺の席に間違えて座っていた大野。

後ろからだったから顔は見えなかったが、
真っ黒な艶のある髪の毛が背中を占領していた。

女子は苦手っつーか、あんまり好きじゃない。

俺はしぶしぶ後ろから声をかけた。


「あのさ、そこ。俺の席なんだけど」

「えっ?」


惚けたような声を出し、振り向いたのは可愛らしいかんじの顔をしていた。


「あ…ゴメン」


そう言って立った。

(うわ……思ったより小さいな)


その子の身長は想像以上に低かった。

たぶん、このクラスで一番小さいんじゃないか?ってくらい。


「あ、あたしの席、ここか」


黒板に書かれた座席表を見ながら、俺の隣に座った。

そこは出席番号5番の席。

(名前は……)


「大野……まし、ろ?」


手元にあったクラス表に書かれた文字の読み方が正解かどうか分からない。

“大野”は合ってるとして、“真白”は、『ましろ』でいいのか?