陵本の後ろに山内が立ち、体中を触りまくる。
その光景にあたしは近くにあった椅子に座り込む。
「真白?」
「気持ちわりぃ……」
市之塚が嫌々ながらも陵本の口の前に手を伸ばす。
ついでにもう片方の手も陵本の体に。
でも触れてはいないだろう。
鎌瀬も首を傾げながらしゃがみ込み陵本の太ももに手を当てた。
その瞬間、陵本が右足を蹴りあげる。
それをあたかも当たったように見せながら鎌瀬が避ける。
その後しゃがみ込み、山内の腹に膝付きをして、
その体制のまま右足を振り上げる――――も。
「あれ?」
スカッと空を切った。
「おい!」
あたしは立ち上がる。
「あんたそこで決められなかったら市之塚に蹴られて終わりだよ?!
バランス力が足りないの!あと足の筋肉も!」
「何で俺が怒られてんの?」
陵本が泣きそうな顔をする。
(だって気になったんだもん)
と思いつつあたしは席に座り直した。
「あー、思い出した」
頭を押さえる。
今は鮮明に映し出される記憶。
「やっぱり聞くんじゃなかった」
「真白、大丈夫?」
依弥があたしの背中を競ってくれる。
その心地よさを感じながらあたしは首を垂らす。
正直言うと、平気じゃなくなった。

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