教室に入るその背中達を見つけてあたしはもう片方のドアから入った。
扇風機の風が直に当たって前髪が揺れる。
こそばゆいのを我慢するためにその前髪を抑えながらあたしは男子たちに近づいた。
近づくあたしにいち早く気づいたのは鎌瀬。
「大野…」
「あのさ」
ゆっくり肩の力を抜いていく。
「昨日のこと、あたしたちに詳しく説明してくれる?」
「「は……?」」
目を丸くしながら皆がいっせいに声を出す。
「あたし、そのなんというか……よく覚えてないんだよね」
「あいつらをあんなに簡単にやっつけてたのに」
「え?」
(誰が、誰をやっつけてた?)
あたしは頭の中の言葉を聞き返す。
「誰が、誰をやっつけてた?」
「まじで覚えてねーの?」
「あんなにかっこよかったのに」
「あたし、何かしたっけ?」
「それはもう、凄かった」
「誰か再現しなさいよ」
依弥が男子を見る。
その言葉を合図に陵本と山内が手を上げた。
「「俺大野役……っ!!」」
「は?」
「「だってやってみてぇんだもん!」」
「どっちでもいいよ」
市之塚がだるそうに言った。
あたしも頷く。
結局、じゃんけんをしてかった陵本があたし役に。

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