見る限り、カマセくんだけは大人しそうだなぁ…なんて――――
「かま、せ??」
あたしの頭の中にはもう一人の鎌瀬が浮かぶ。
(まさか……)
「か、カマセってどう書くの?」
「え?あー、鎌倉の鎌にさんずいに頼るって書いて…」
だるそうにいう鎌瀬くんの前であたしは確信した。
こいつは、
「鎌瀬の弟?!」
だってことに。
(あいつ、弟いたんだ)
あたしは唖然と口を開ける。
確かに、この肌の黒さといい、目元といい…
「鎌瀬にそっくり」
まじまじと見つめるあたしに鎌瀬くんは片眉を上げた。
「さっきからよくわかんないんすけど。俺は鎌瀬ですよ?俺に似てるってのはおかしい」
「あ、ごめんね?違うの。あたしあんたの兄ちゃんのクラスメートだよ」
「は?兄ちゃんの?」
目を開かせた鎌瀬くんに自信満々に頷く。
「あんたの兄ちゃん、鎌瀬浩一でしょ?」
「まぁ…」
「やっぱり。ビンゴだ」
鎌瀬に弟がいたなんて初耳だった。
まぁ知っていてもどうにもなんないけど。
だけど、双子みたいにそっくりだ。
身長はあたしと同じくらいだから、鎌瀬よりは低いんだね。
「そっかー!鎌瀬くんは鎌瀬の弟か!!」
「紛らわしいっすね」
「あ、ごめん」
そんな感じで鎌瀬の弟との初対面を終わらしたあと、あたしは稽古を受けながら新入りの生徒たちに型などを教え、
久々の道場を堪能したのだった。

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