あたし以上の上段者になると、生徒というよりは先生だ。
だから皆は先生と呼ぶが、あたしだけ普段は先輩と呼び続けている。
稽古が始まると先生だけど。
「先輩、久しぶりですね」
「真白…………太ったか?」
「新手のお手合わせ出願ですか?」
引き攣った笑顔で微笑みかける。
(ケンカ売っんのかこの野郎)
「いや、冗談だ」
「あらつまんない」
「お前にはなぜか型以外で勝てる気がしない」
あたしは軽く睨みながら先輩をじっと見る。
「師範は?」
「あぁ、今頃かりんとう食ってますよ」
「はぁ?お前なぁ…そういうのは最後に渡せって!食いはじめちゃうだろ?」
「忘れてましたー」
「ケンカ売ってんのかゴラ」
「お手合わせ願いますが?」
「……やっぱやめた」
「ほんとにつまんない!」
先輩から顔を逸らして周りを見る。
真ん中に、見慣れない子たちが四、五人固まっていた。
そこを指差して先輩に質問する。
「先輩、あそこにいるのは新入りですか?」
「あぁ、挨拶してきたらどうだ?」
先輩の言葉を飲み込んで あたしは真ん中に駆け寄った。
見た目は小学生くらいだ。

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