ちぐはぐ遠距離恋愛




あたしはクシャリと手紙を潰した。


いつも一人で勝手に行動して―――



「いい加減なこと、言わないでよ……っ」


そう呟くとともにあたしは廊下の板を蹴る。

更衣室に一目散に駆け出し、洋服をパッと脱ぎ捨て道着をまとう。

自分の名前が刺繍された黒帯をきつく締め付けた。

これによって気持ちが引き締まる。
やるのとやらないのでは全然違うんだから。


更衣室を出たあたしはすぐ横にある道場の前で正座をして黙想をした。

皆は反対の方向を向いたままだからあたしに気づいていない。

目を開けた瞬間、指を揃えた手を出して前の床につける。


「……失礼します!!」


この声でやっと皆があたしに気づいた。

先輩(先生)があたしを見て声をかける。


「休憩!」

「「はいっ!!」」


その言葉とともに顔見知りの奴らがあたしに駆け寄る。


「真白先輩!!久しぶりですね」

「真白先輩!今日こそ稽古つけてくださいよ?」

「あとで型見せてください!」


もちろんこの中には、高校生や大人だっている。

でも段が上で有る限り、年齢による上下関係はない。


「久しぶりだね、皆。またあとで」


あたしは取り合えずそう言うと、端っこで待っていた先輩のところに駆け寄った。