村野はチラリとあたしを見る。
そして、フッと微笑んで……
頬に当てられたあたしの手を取った。
「えっ…」
「帰るぞ。道場行くんだろ?」
そう言いながら、村野はあたしの手を握り歩きだす。
「ちょ…っ、村野?!」
グングン進んでいく村野にあたしは後ろからついていくことしかできなかった。
一気に、距離が縮んだ……。
そんな気がして、いつの間にか頬が緩む。
強くもないけど、弱くもない。
それが“幼なじみ”ってことへの村野の気遣いだと思うと、優しい気持ちにならずにはいられなくて。
あの時からだった―――
奈緒美たちがあたしを男装させたあの日。
迷路のようなところで迷っていたあたしたちは、
少しだけ、もとの位置に戻れる道に入ったんだ。
半年以上会話なんてなかった。
あたしだけが意識して、
あたしだけが願って。
そんな日々が、あの時…あの瞬間から百八十度グルリと回転したんだ。
いつも触れていた村野の手を見つめる。
(嬉しいな……)
純粋に思えた。
何の悪いものも無くて、
ただ、
ただあたしは、
この人の隣にまた並べることになるかもしれない。
っていう期待に胸を弾ませていて……、
村野に微笑みながら少し駆け寄り、昔のように腕を触れ合わせながら隣に並んだ。
それだけだったのに――――――

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