ビクッと肩を震わせたのは、もう片方の手を榊原君が優しく握ったから。

それに伴い、二人に伝わっちゃうんじゃないかと思わんばかりの血液が凄い速さで体中を駆け巡った。



「……っ」

「俺が、来ますから」

「え?」

「俺が、先輩を貰いに来ますから」


榊原君の声が、鼓膜に留まって中で何度も響く。

知らない感覚に体はやはりついていけない。

あたしはただ、それを堪えるように…
口を食いし縛るみたいに閉じながら村野の腕を掴む力を強くする。


「だから真白先輩」


榊原君に握られた手からはじわじわと温かさが滲み出した。

この温もりが妙に眠気を呼び付ける。
体がポカポカしてくるくらいだった。




「それまで、誰のものにもならないでくださいね?」



甘く、優しく……



体の奥底まで行き届くには十分だった。

心にまで、しっとりした温かさを残して榊原君の手は離れる。



くすぐったくなるような気持ち。

こんなの初めて。


モゾモゾってするような、こそばゆい感覚。

体をよじらせたあたしに榊原君は笑った。


「かわいい」


そう言いながら。

高杉先輩みたい……。



隙もない、不意打ち。


くらったら最後、あたしは何も喋ることができなくなる。