ちぐはぐ遠距離恋愛




―――――――………

「ねぇ待ってよ!」

「………」

「む、…無視しなくてもいいでしょ?!」

「…………」



あたしの数メートル前をスタスタと歩く。

何を言っても返事をしてくれない。



(絶対…聞こえてる…っ!!)



あたしはスゥ…と息を吸った。

声はでかいほう。
ここからあいつの鼓膜破ってやれるくらい簡単かもしれない。



キュッと音をたてて立ち止まるあたしは、




「諒太ぁぁぁ!!!」




吸った息、全てを吐き出した。




耳を押さえながら振り向いた諒太を見て少しホッとした。


あたしはそのままあいつのもとへ。



「置いてかないでよ!」



あたしが顔をあげたときには、





今まで見たことのないような、





悲しいとか、残念とか……。

そういうものが、たくさん混ざった顔をしていた。



思わずドキッとしてこれ以上近づくのをやめた。





諒太がゆっくりと口を開く。




スローモーションに映るそれが物凄く――




怖かった。





(聞きたくない……!)




体は危険に気づいている。


だけど金縛りにあったように機能しない。





(…やだ…やだ…、やだやだやだ……っ!)